小説

もぐら 醒 (中公文庫)

もぐら 醒 (中公文庫)

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 伊藤計画『虐殺器官

これはすごい。何の気なのしに手に取った本であったが、あまりの完成度の高さに驚愕。近未来的な戦闘シーン、社会思想、グローバルなポリティクスの発想、さらに衝撃の結末。国民国家の持つ暴力性と、人間の持つ不条理さ、そしてだからこそ尊く思えるヒューマニズムが見事に描かれている。あとがきを読んで、著者が他界していることを知り、二重のショックを受けた。冥福を祈りたい。 

 

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

人はアイデンティティについては深く悩む。しかし実は人様々な制度や、技術によってアインティフィケイトさせられている。自分は何者であるか。アイデンティフィケイトの技術を逆手にとれば、別人になることもできるのでは。背景はカード社会の社会問題であるが、近代的な主体の問題にたどり着く。犯人をおいかける刑事の心理変化も読みごたえがある。さすがの受賞作。