東野圭吾『夜明けの街で』

夜明けの街で (角川文庫)

夜明けの街で (角川文庫)

テーマは不倫。不倫は文化とのたまわる方もいるが、この本を読むと文化というより「性(さが)」という方がふさわしい。まるで蟻地獄のように、もがけばもがくほど、逃げられなくなる。それでも甘美な罠に吸い込まれるようにはまっていく人間の性。殺人事件はこの小説にとってスパイスにすぎない。本当のミステリーは、日常の中のなにげない会話や、行動、約束などに潜んでいるのかもしれない。世の妻帯者には恐ろしい一冊かも。。